夜中ラーメンが食べたくなったら歯を磨いて布団にはいる
「清原薬物問題」をどう捉えるべきか
薬物依存症治療の第一人者に聞く「病」の実態と課題
庄子 育子
>>バックナンバー2016年2月10日(水)1/5ページ
なるほど。
薬物依存症治療の第一人者に聞く「病」の実態と課題
庄子 育子
>>バックナンバー2016年2月10日(水)1/5ページ
脳内の快感中枢を直接刺激する性質を持つ覚せい剤は、言うなれば、この努力の後の周囲から承認された気持ちよさに通じる感じを与えてくれる
当の本人は、「自分はつらいことがあってもこうやって気持ちを切り替えて、薬も自分の生活もコントロールでてきている」と思い込んでいる。けれども、実際には使い方がおかしくなって量も増えていく過程で、薬にすっかり振り回されている状態になってしまっています
覚せい剤に関しては、薬が切れた後に長く寝てしまうことが少なくありません。薬で中枢神経を刺激し、エネルギーを前借りしている状態ですから。効果が切れればがくっと寝てしまうんですね。それは、目覚まし時計をガンガン鳴らしても起きない深い眠りだったりする。
そうすると週末だけ覚せい剤を使って月曜からちゃんと仕事をしようと思っても、起きたら月曜の昼や夕方だったりして、職場に行けない。
薬物のよさを知っている人はストレスがあったときに薬物に頼る。そして、つらさをやわらげて、しんどい今を生き延びようとする。その繰り返しです。つまり快楽ではなく苦痛の緩和のために薬物にハマるわけです。
ちょっと俗な例かもしれませんが、夜中に急にラーメンを食べたくなることってありませんか。そこで若干葛藤しますよね。今、食べたら翌朝、気持ち悪いし、そもそも太るじゃないかと。でも、そこで、考えてみたら、今日はずいぶん疲れたし、夕食は軽かったから大丈夫などと自ら言い訳して、結局食べてしまう。葛藤していたらほぼ100%ラーメンを食べるわけです。
だからラーメンを食べたいと思ったら、これはいつものパターンだから、すぐに歯を磨いて布団に入るなどと決めておけば、食べなくて済みますよね。それと同じような戦略を覚せい剤についても取るようにするのです。
やめられないとまらないという病から回復するためには、「薬をやりたい」「薬をやってしまった」と正直に告白できる場所が必要だと感じています。覚せい剤依存の人たちは「やりたい」と言っているうちはやらないんですよ。やると決めたらその気持ちを押し隠して、邪魔されないように仕事のスケジュールを調整し、周到に時間とお金と場所をつくるんです。そしてこっそり使うんです。「やりたい」と打ち明けるのは、何とかしたいと思っている。それから、「やってしまった」と告白するのは、確かに失敗してしまったけれどもこのままではいけないと思っていることの現れです。
今回の清原さんしかり、他のいろんな芸能人が薬物の事件を起こすたびにそうなのですけれど、報道はときどき人格攻撃になりますよね。生い立ちをいろいろ探って、このトラウマがあったから薬物に手を染めたなどと伝える。
激しく糾弾することで本人がそれこそ闇の世界にしか帰れなくなる恐れもある。それが病を抱えた人に対して果たして妥当な措置なのか、私自身は疑問を感じざるを得ません。
「そうか、俺の父親は人間じゃないんだ、人間じゃないやつから生まれた子供だから俺もダメだなと思った。それで、自暴自棄になって、悪い仲間に自分から近づいて薬をやったのが最初のきっかけだった」と語っていました。このエピソードは今も忘れられません。
なるほど。